コラム
エビングハウス
2024.12.0515:25
カテゴリー:コラム
ヘルマン・エビングハウスというドイツの心理学者を御存じでしょうか?
「エビングハウスの忘却曲線」というものは、聞いたことがあるかと思います。「人間の記憶は、1日で74%を忘れてしまうが、早期に復習をすることによって、記憶力を定着することができる」といったものです。
エビングハウスのもう一つ有名なものとして、「エビングハウス錯視」といったものがあります(↑画像参照)。この画像を見て、ランチェスター戦略の「1位の効果」には、顧客の心理的要因も多分にあるなと思いました。つまり、大きなものに囲まれたシェア下位の企業と、小さなものの上に立つシェア1位企業の顧客からの見え方の心理的効果です。真ん中のりんごの大きさは、どちらも同じなのですが、左の小さなものの上に立つ1位企業は、質量とも充実していると錯覚する効果です。ランチェスター戦略は、ライバルとの関係性を意識した相対的な競争戦略論であります。
競争の世界において、「鶏口牛後」や「鯛の尾より鰯の頭」といった故事成語やことわざにあるように、狭いカテゴリの中で強者を目指すことがいかに大事かを「エビングハウス錯視」からも感じることができます。ライバルとの関係性を常に意識して、企業経営をコントロールしていきましょう。
麻雀と経営
2024.09.0210:28
カテゴリー:コラム
この年齢になって、「フリー雀荘」に初めてデビューしました。賭け事ではなく、月間MVPを目指して熱心に通うプレイヤーたちが集まる場所で、Mリーグに出るプロもおり、非常にレベルが高いです。最初のうちはボコボコにされ悔しい思いをしましたが、次第に勝つことも増え、最近は面白くなってきました。
麻雀は、34種類136枚の牌を使ったゲームで、見えている牌と見えていない牌を推測しながら、確率や統計に基づいた戦略を展開します。初心者がいない雀荘では、基本的な知識を持った者同士が対戦するため、非常に高いレベルの戦いが繰り広げられます。
ランチェスター戦略の先生から「敵も学んでいると思って、自社の戦略を考えよ」と教わりましたが、麻雀も同様です。
100,000点の点棒をめぐってのゼロサム型(勝ちと負けの総和がゼロになる)のゲームであり、自分の持ち点と他者の持ち点の状況に応じて戦い方が変わります。この点は、ライバルのシェア状況により戦い方が変わるランチェスター戦略と非常に似ています。また、陽動作戦や誘導作戦といった戦術も共通します。
そして、最後は流れ・勝負運・勝負勘がものを言います。
勝てないときはどうしても勝てないので、じっと耐えて負けが込まないようにする必要があります。逆に、勝っているときは流れに乗ることが重要で、その流れに逆らうとツキが逃げてしまいます。経営と麻雀の共通点を感じながら、日々楽しんでいます。
MQ会計もどき
2024.04.3013:10
カテゴリー:コラム
ラーメン屋さんの会計です。次の中で、「原価」は、どれでしょう?
①材料費(麺・スープなど)
②人件費(調理人の給料、接客アルバイト代)
③水道光熱費(お店の電気ガス水道代)
④ 消耗品費(はし、テーブルの調味料など)
①-③については、「原価」
④については、「原価」または「販売管理費」になります。
これをさらに、原価計算の考え方で分類すると、「直接費」 ②~④は、「間接費」となります。
「間接費」は、さらにラーメン1杯の原価を割りだすため、「何らかの方法」で配賦計算します。
「原価」と「経費」に分けます。「何らかの方法」?? (笑)
原価計算をもとに算出される分析は、これが極めて、非科学的なのです。(配賦した原価は、本当にQに正比例しますか?)MQ会計は、本来きわめてシンプルなものです。
Qに正比例するものはV、そうではないものは、すべてFになります。
したがって、語源である「V(変動費)」「F(固定費)」とは、本来違うものなのです。
正しくは、「Qに正比例するもの=V」「Qに正比例しないもの=F」です。
語源に引っ張られて、本来のMQ会計の考え方と違う方法で、思考しないようにしましょう。
それでは、Vは何なのか、Fは何なのか?
社長ご自身の頭で考えて、一番しっくりくるものを採用するのが良いです。MQ会計にルールはありません。
あくまで考えるための道具(ツール)です。
「戦略脳」と「戦術脳」
2024.01.2217:22
カテゴリー:コラム
(問題)メロン1個とみかん1個の合計金額は1100円です。
メロン1個とみかん1個の値段の差は、1000円です。
メロン1個の値段は、いくらでしょう?(メロンの方が高い)
こういう問題を出されると、多くの場合、メロン1個1000円と答えてしまうでしょう。
1050円のメロンと50円のみかんで合計1100円が正解です。
2002年に行動経済学者でノーベル経済学賞を受賞した ダニエル・カーネマン氏が、著書『ファスト&スロー』の中で、人間の思考には、【システム1(早い思考)】と【システム2(遅い思考)】があり、
「システム1」は直感的思考、「システム2」は論理的な思考を指し、常に人間は脳のエネルギーの省力化のため、システム1が優位にある(デフォルトがシステム1)と言っています。
この話を聞いて、いわゆる「物事を鵜呑みにする人」というのは、このシステム1だけで判断する行為が習慣化されてしまった人だと感じました。常にフォーマットやマニュアルに頼る人の特徴を見ていると、システム1からシステム2へ脳が移行する時間を待てないことが習慣化されてしまったように感じます。そのほうが楽だからです。
戦略と戦術の関係で考えると、「戦術脳=システム1」と「戦略脳=システム2」ですね。
このように脳の仕組みを理解しておくと、意識的にシステム2の脳のスリープ状態から稼働する時間を待つということが習慣化され、「戦略脳」が鍛えられていくのではないでしょうか?
狙うべき中心市場を絞る
2023.11.0110:09
カテゴリー:コラム
「実践ジム」で使用している「商品・地域・客層」について、「重点・中心・範囲」を決定して、9つのマスを埋める「戦略マトリクス」はご存じかと思いますが、特に戦略の構築初期の段階において、「中心」の内容が広い市場を狙いすぎているというケースが散見されます。
いろいろとヒアリングをしていくと、「市場を絞りすぎると、これまでやってきたことに対し、売上のチャンスを失ってしまうのではないか?それではやっていけなくなる。」といった怖さがあるということをお聞きします。
そういった場合、ちょっと視点を変えて、狙うべき中心市場において、シェア42%をとった時に、どれぐらいの売り上げが立ち、どれぐらいの利益が残りそうかを算出してみるといいと思います。
「1人当たりの粗利益が業界平均の1.5倍~2倍」を目指すにあたって、市場の絞り込みができていない場合、自社の社員の規模以上に広すぎる範囲を狙っていることがわかると思います。
中心とする市場を狭くしても、「範囲」で稼ぐことはできます。売上は、「範囲」でも稼げることを合わせて考えると、現時点では狙うべき「中心」市場がもっともっと狭くても大丈夫なことがイメージできると思います。
戦略構築において、狙うべき市場の大きさをきちんと把握し、自社の身の丈にあった「1位主義」を目標に掲げないと、「何でもやります」の「売上主義」の発想に結局戻っていってしまうことになります。何のために、目指すべき「1位」を設定するのか?
「売上利益は後からついてくるもの。」そこを見失わないようにしたいものです。